涙の痕が乾いて、ひりひりする。

私が好きなのは遼のはずなのに。



「ずっと、ごめんな」


『ごめんな』と、晴人は言った。



「苦しめてごめん。迷わせてごめん。泣かせてごめん。ずっとお前に謝りたかった」

「私は謝られたくなんてなかったよ」


私の言葉に、晴人は肩をすくめて見せる。

子犬は不安そうな顔で、私たちを交互に見ていた。


しばしの後、息を吐いて、私は今度こそ立ち上がる。



「帰るよ。これ以上、ここにいて、テスト期間中に風邪引いても困るし」


晴人の顔が見られず、背を向ける。

そのまま、足を踏み出そうとした時、「里菜子」と、晴人は私の背に声を掛けた。



「何かあったらいつでも言えよ」


どうして?



「お前は笑ってりゃいいからさ。そのためだったら、何だってしてやるから」


どうしてそんなこと言うの?

止まっていたはずの涙がまた溢れてしまいそうで、私は何も答えられないまま、逃げるようにその場を去った。


私の、心は……。