『何で』と言われても。

晴人の目が怖くて、思わず私は焦ってしまった。



「ほら、おばあちゃんのことで、色々迷惑かけちゃったしさ。この前だって、晴人のおかげで元気出たし?」

「………」

「てか、私たち、何かやっと友達みたいになれたっていうか? お互い、昔のことはもう忘れて、これからは」


言い掛けた時、腕を引かれて、玄関内に押し込められた。

背中でバタンとドアが閉まる音を聞くより先に、晴人は私を壁に貼り付ける。


手に持っていた紙袋が、ドサリと床に落ちた。



「……何、やって……」


本能的に身の危険を感じ、逃げようとしたが、捕らえられたままの腕は動かない。

それでも私は暴れたが、反対の手で顔を掴んだ晴人に、強引に唇を奪われた。



「やっ、んんっ」


息ができなくて、あえぐように口を開けると、今度は舌が入ってきた。


今、自分が何をされているのかわからない。

晴人は間違っても無理やりこんなことをする人ではなかったはずなのに。



「やだっ! やめてっ!」


涙が溢れ、体を震わす私を見て、やっと晴人は離れてくれた。

肩で息をしながら睨む私に、晴人は目を伏せる。



「俺とお前が、今更、『友達』になんかなれるわけねぇだろ」


晴人は吐き捨てるように言う。

私は足を引きながら、服の袖で唇を拭った。



「なぁ、俺どうすりゃいいの」

「………」

「どんだけ里菜子のこと傷つけても、それでもずっと好きなままなんだ」