遼が何を言っているのかわからなかった。

触れられている場所から嫌悪が走り、上手く声が出せない。



「なぁ、今日は遅くまで一緒にいられるんだろ?」

「え? あ、えっと……。あんまり遅いのは困るよ。休んでた分の勉強と、あと洗濯ものとかもしなきゃいけないし」


私の言葉に、遼は「は?」と顔を歪めた。



「何で? 勉強なんていつでもできるし、おばあちゃんがもういないなら、リナがこれ以上、家事する必要ないっしょ」

「いや、でも、お母さんだって大変だから、やっぱり私ができることくらいはするべきだと思うし」

「そんなのおかしいよ!」


遼はいきなり声を荒らげ、私の肩を掴んで揺すった。

見たことのない形相だった。



「どうして? リナはずっと家に縛られてたんだから、おばあちゃんが亡くなって、解放されたんだからもういいだろ?」

「………」

「俺の親はいつも言ってるよ? 『学生のうちは自分のやりたいことをやりなさい』、『今しかできないことを全力で楽しみなさい』って。でもリナがやってることは真逆だよ。それでリナは幸せだって言える?」


わからない。

遼の言っていることがわからない。


私は、別に家に縛られてたわけじゃない。



「私は、おばあちゃんが好きだった。だから、おばあちゃんのために何かをすることは、全然苦じゃなかった」

「うん。でももう、おばあちゃんはいないんだよ?」