父は私に向き直る。



「なぁ、リナ。こっちに戻ってきて、お父さんと暮らさないか?」

「え……」


向こうに、戻る?

言っている意味がわからず、ひどく困惑する私。



「何言ってんの!? こんな時に、やめてよ!」

「わかってるよ。でも、こういう時だからこそ、もう一度、お父さんと暮らすことも考えてほしいんだ」


勝手すぎる。

離婚して以来、ずっと疎遠になっていたのに、祖母が亡くなったこのタイミングで。



「お父さん、昇進したんだ。大変なことは増えたけど、その分、帰る時間は調整できるようになった。だから今度はちゃんと、リナと一緒に晩ご飯を食べられるよ」

「………」

「リナだって、友達と離れるの、嫌だったろ? こっちに戻ってきたら、またみんなで遊べるじゃないか。ゆりちゃんとか、またうちに呼べばいい」

「……そんな、こと……」


唇を噛み締める。

私が、どんな思いで、ここで2年間を過ごしてきたか。


しかし父は、私が何か言うより先に、立ち上がった。



「まぁ、でも、こんな時だから、すぐに答えを出せとは言わないよ。リナにはリナの生活があるんだし。でももし何か辛いことがあったりして、リナが逃げ出したくなった時には、お父さんがいることを忘れないでくれ」


卑怯な台詞。

それなのに、逃げ場ができたと思うと、怒るに怒れなかった。


祖母が亡くなった今、私はどうするべきなのか。