委員会が終わる頃には、校舎に人影はまばらだった。

今日はいつもに増して疲労感があり、ため息混じりに廊下を進んでいた時。



「あれ? 小泉さん?」


前から竹田くんが歩いてきた。



「もしかして、小泉さんも委員会だった? 俺さぁ、じゃんけんで負けて図書委員だよ? しかも図書室どこにあんのかわかんなくて、迷って遅刻して怒られて、最悪すぎじゃん?」


竹田くんは、まるで昔からの友達みたいに話し掛けてくるから苦手だ。

何とも言えない私は、返事もせずに、そのまま行こうと思ったのだけれど。



「小泉さん」


竹田くんは、もう一度、今度は少し低い声で、私の名前を呼んだ。



「なぁ、ちょっと話せない?」

「え?」


思わず足を止めてしまった。

面倒なことになる予感はしたのに。



「俺、実はずっと、小泉さんとちゃんと話したいって思ってたんだけど、いつも目も合わせてくれなかったから、今、いい機会だと思って」

「別に私は竹田くんと話したいことなんて何もないし」

「小泉さんになくても、俺にはあんの」


笑顔で、でもどこか強引なところは、さすがは晴人の親友だろう。

何を言われるのかと身構える私に、竹田くんは言った。