うるさい鼓動は、誰のものなのか。



一枚一枚、服を脱ぐ。

汗ばんだ肌と肌が密着する。


匂いも、体温も、人によってまったく違うのだと知った。



遼は、ふと、私の髪を梳いて、言った。



「あれ? リナ、ここに傷あったんだな。気付かなかった」


左の眉の上を、遼の指が這った。

普段はそこだけコンシーラーを重ね塗りし、絶対に誰にも気付かれないようにしている、古傷。


途端にあの日の流星群を思い出し、ぞわりと鳥肌が立った。



「俺もちっちゃい頃に転んで怪我した傷、まだ消えないんだよね。ほらここ、わかる?」


無邪気に笑いながら、遼は自分の腕を指差す。



「場所は違うけど、何だかお揃いみたいだな」


緊張する空気を、どうにか和まそうとしてくれたのかもしれない。

だから、それに応えようと、私は必死で笑みを作ろうと思ったのに、なのに唇が震えて、上手く笑えなかった。


どうしてこんな時に、思い出してしまうのだろう。




絶望に打ちひしがれる私の中に、遼が入ってきた。



痛みと嫌悪感に、くぐもった声が漏れる。


遼は本気で私を好きでいてくれて、そしてこんなにも優しくしてくれるのに。

なのに、私は、今この瞬間、逃げ出したくてたまらなかったのだ。