夜。
風呂上がりにアイスを食べようと冷凍庫を漁っていたら、「リナ」と、背後で母の声がした。
「ねぇ、もうすぐテストでしょ? ちゃんと勉強してるの?」
どうでもいいと無視してアイスの一本を取り出したが、しかし母はそんな態度の私に、声を荒らげた。
「聞いてるの? リナ!」
肩を掴まれた反動で、手に持っていたアイスが床に落ち、砕けた。
あぁ、もう、最悪だ。
「放っといてよ」
「え?」
「勉強も、お母さんの代わりにやる家事も、全部ちゃんとやってるから放っといてって言ってんの!」
気付けば自分が思った以上の声が出ていた。
母はひどく驚いた顔。
「リナ……」
私は落ちたアイスを拾うこともせず、茫然としたままの母に背を向け、ひとり階段を駆けのぼった。
イライラする。
あの日から、今でもまだ埋められない、私の中のもうひとつの溝。


