きみと秘密を作る夜

晴人と会話してる。

それすら今の私には信じられないことだった。


晴人は息を吐き、人ひとり分のスペースを保って、私の隣に腰を下ろした。



「晴人こそ、何でここにいんの?」

「何でかなぁ。わかんねぇけど、気付いたら足が向いてた」


私と同じ理由。

だからって、それでどうして去年と同じように、私の隣にいるの?


私に関わりたくないと言ったくせに、と、戸惑いばかりが大きくなる。



「矢野さんと一緒に過ごさなくていいの? もしかして、上手くいってないとか?」

「放っとけ、バーカ」


晴人は明確には答えない。

だから、私には、それ以上のことは聞けない。


沈黙が、やたらと重い。



「ねぇ」

「んー?」

「離婚したってほんと? 近所で噂になってるよ」

「おー。したした。別にどうでもいいけど」


晴人は投げやりに認めて、後ろ手に手をついた。



「中学1年くらいだっけなぁ。出張ばっかってことになってたけど、ほんとはその頃から、おっさん、女いた」

「……知ってたの?」

「知ってたよ。つーか、一緒にホテル入って行くの見たし。あの日はさすがに、家帰って吐いたなぁ。マジでトラウマ」


だから晴人は、父を父とも言わず、嫌っていたのだ。

ずっとそれをひとりで抱えていたのだと思うと、胸が潰されるように痛くなる。