年を越すまで、あと20分。
どうせだから、ここで除夜の鐘を聞いて帰ろうと、去年と同じように、石階段に腰を下ろした。
身を切るような風の冷たさに、思わず身を縮めてしまう。
「マフラー、してくればよかったなぁ」
ぼうっと闇空を見上げていた時だった。
ジャリッ、と音がして、顔を向ける。
足音は近付き、そして石階段をのぼり切る前に止まった。
晴人だった。
「……里菜子?」
目を見開いた晴人が、ためらいがちに私の名前を呼ぶ。
一体いつぶりに、その口から私の名前を聞いただろう。
「何でここにいんの」
怪訝に問われて、少し迷う。
もう二度と晴人に声を掛けないと、私自身が言ったのだ。
だけど、向こうから話し掛けられた場合は、どうすればいいのだろう。
「家にいたくなかっただけ」
それでも、無視することもできずに、答えてしまった。
「別に、晴人のことストーカーしてたとかじゃないから」
「わかってるよ。つーか、今更、そんなん思ってねぇし」


