その日から自分の顔をマジマジと鏡に映すことが多くなった。

そして気付いてしまった。自分の顔にある鼻と顎が他人と違うことに。

もちろん目だって一重だしお世辞にも大きいとはいえないだろう。

でも、鼻と顎は明らかに違う。鼻は豚のように丸く大きいし、顎は異常に太くて長い。

幼いながらに鼻が小さくなるマッサージや顎が短くなる体操をしたりもした。

でも、顔には何の変化も見つけられない。

そんな時、クラスメイトの男子があたしを見てこう言った。

『うちの中学の姉ちゃんの英語の教科書にロングロングアゴ―って書いてあったんだけど!!アイツのことだろ!?』

そう言って彼はあたしを指さして笑った。

『え……?』

顔中の筋肉という筋肉が引きつったのに自分でもわかった。

『ロングロング、顎?』

『ねぇ、何の話?』

女子達も加わりクラス中が大騒ぎになる。

『佐知子のあごの話してんだよ。佐知子ってロングロングアゴ―じゃね?』

『あー、長い顎ってこと!あははははは!!超ウケる!!!』

『ぎゃははははは!!確かになげーな!!』

『まさに佐知子の為の言葉だな!!』

みんなはただふざけていただけかもしれない。でも、あたしはその場の空気に耐えられずそのままランドセルを掴み教室を飛び出した。