「痛っ!」

背中に何かが飛んできた。

振り返ると、クラスメイト数人が目を見合わせてクスクスと声を押し殺して笑っている。

予想した通り、わたしへのイジメは教室中に広がっていった。

休み時間になると、頭に消しゴムのカスを降りかけられ、故意に机にぶつかられたり椅子を蹴られたりした。

それを見ていた他のクラスメイト達が手を叩いて大笑いする。

わたしが傷付く顔や驚く顔をみて何が楽しいんだろう。

どうしてこんなことをするんだろう。

ぎゅっと唇を噛みしめてうつむいていると、

「愛奈……、あのさ」

わたしの席へやってきた真紀が恐る恐る声をかけてきた。

昨日の夜、一方的に電話を切ってから真紀からのメッセージも全て無視していた。

既読にもしていない。

「……なに?」

わたしはちらりと真紀の方に非難する視線を向けた後、すぐに机に視線を落とした。

「き、昨日のことなんだけど……。ごめんね。あたし、愛奈のこと怒らせちゃったでしょ?それで仲直りしたいと思って。だから、あの――」

しどろもどろになっている真紀。どうやって謝ったらいいのか必死に考えているからこそ、つらつらと言葉が出てこないんだろう。

真紀はわたしがどうして怒ったのか分かっていないし、その理由だって分かっていない。

それを知らせずに一方的に真紀を責めるのは確かによくないことだ。

もうすべてを真紀に話そうか……。カスミちゃんたちや佐知子たちにされていることのすべてを……。助けを……求めてみようか……。

真紀との付き合いは長い。きっと真紀ならわかってくれる。そうだ……。全部話そう。

「あのさ、真紀――」

わたしが口を開いた瞬間、「真紀~!ちょっときて~!」と佐知子が真紀の手を引っ張った。