あれから数日が経った。
慣れない仕事で残業に追われる日々。

“今日も残業だしコンビニでご飯買おうかな”

そう思い家の近くのコンビニへ寄った。

“あっ…”
コンビニへ入ると、この間の隣人のお兄さんを見かけた。

“話しかけるべきかな、でもこの間も嫌そうだったしやめておこう。”

知り合いではあったが、気付いてないフリをしていた。

『あ、この間の…』
まさかの向こうから話し掛けられた。

「あ、どうも。笑」
『今帰りですか?随分遅いですね。』
「残業だったので仕方ないです。」
『この間は妹がお世話になりました。』
「いえいえ。気にしないでください。」

ぎこちない会話。
沈黙が嫌でその場から立ち去ろうとしたら

『へぇ、矢吹さんってお酒とか飲まれるんですね。』

いきなりだった。私はびっくりした。
「いや、まあ。明日お休みなので。笑」
戸惑っているのを誤魔化そうと私は悪戯っぽく笑った。

「お兄さんこそ、お酒とおつまみ買い漁ってるじゃないですか。笑」

『あぁ、久々に明日休みになったのでせっかくだし飲もうかと思って。笑』
初めて笑った顔を見た。目がクシャッとして凄く綺麗な顔。その顔に私は釘付けだった。

そのまま談笑しながら私たちはコンビニをあとにした。

『歩きながら飲むビールって美味いんすよ』
ビールをプシュッと開けて飲みながらそう言った。

「そうなんですか?じゃあ私も。」
普段はそんなことしないが、何故か私も買ったビールを開けて飲んでいた。

『公園、寄っていきません?』

「いいですよ。」
私達は帰り道にある公園のベンチに座った。

『いつもこの時間にコンビニ行くんですか?』

「いや、今日は残業だったのでご飯作るのが面倒臭くて。」

『そうなんですね。俺も今日は仕事長引いちゃって。』

「お互い、お疲れ様ですね。笑」
なんて笑い合いながらくだらない話をした。

彼の名前は市川蓮。年齢は25歳。
仕事については詳しく教えてくれなかったが
営業みたいなものだと教えてくれた。

その日は一通り話し終えて、お互い帰ることにした。

『じゃ、またいつか』

「ありがとうございました。」

まさかこの出会いが、平和だった私の人生を変えていくことになるとは思ってもみなかった。