バキッと鈍い音が家の中から響いた。しかし、その音は人間ではない僕にしか聞こえないだろう。

家の中から絶え間なく鈍い音と悲鳴が聞こえる。悲鳴はリリーのものだ。

「お前はこの家の召使いなんだよ!!何でサボるんだ!!」

「さっさと食事を用意しな!!三十分以内に全部終わらせないと承知しないよ!!」

怒鳴り声が聞こえた刹那、泣き声が僕の耳に届く。リリーの声だ……。

「ごめんなさい、ちゃんとしますから……」

リリーのこんな悲しげな声も涙も、僕は知らない。そんな顔をしていてほしくない。もうこれ以上、傷ついてほしくない。

ごめんね、僕は臆病なずるい存在。だからリリーがこんなに苦しんでいるなんて知らなかった。悔しくて、涙が止まらない。

だからこそ、君を今助けるよ……!!

僕は覚悟を決め、フードを取る。黒い耳が露わになった。続いて尻尾も出す。立派な耳と尻尾は僕が人狼だって嫌でも教えるんだ。自分にも周りにも……。