外の騒がしさで目を覚ました俺は、無機質な所にいた。
手術は成功したようだ。
まぁ、実質、そんなに難しい手術では無いと聞いていたし、かなり腕のいい出頭医だったからあんまり不安はなかったが。
それにしても、外国の病院は全く静かじゃないのな。
「日本が恋しいなんて、笑わせる。」
ベッドから立ち上がり、ネオンが光る、アメリカの街並みを見下ろす。
「畜生。」
俺の複雑な心境を知る由もない大都市のビル群は2日前と同じく煌々と光っている。
そのビル群の明かりにさえ、イラつきを覚える俺は、大分心が狭い。
そんな時、コンコン、とまた跳ねるような音が聞こえる。
俺の返事を待たずして、扉を開けるその看護師に「起きたならコールしろ。」と怒られ、なぜかも分からないまま取り敢えず謝った。

それから俺は抜糸されるまでの間、勉強に明け暮れていた。
こういう時、本当に両利きで良かったと思う。
元々勉強は好きだったし、頭も悪い方ではない。
人生がeasyに進むように生んでくれた両親に心の底から感謝する。
看護師「Hey」
看護師がフレンドリー過ぎるが、ここはアメリカ。日本の常識は鼻で笑われる。
いや、別にいいんだけどね。
看護師から今日の午後に抜糸をすることになった、と報告を受ける。
…それにしても、前日かよ。
流石、アメリカ……なのか?
「宜しく、」
と英語で伝えると、看護師は嬉しそうに出ていった。
あの看護師、やっぱ、ちょっと変わり者なんじゃね。

抜糸が終わって、俺はリハビリに明け暮れた。
このまま右手が使えないのは正直きつい。
元々の利き手が左手なのは不幸中の幸いだが、今ではご飯や、筆記用具を持つのは右手だ。
今でこそ、左手で生活をしているが、このまま一生これって言うのは、しんどい。
俺の怒涛のリハビリは3ヶ月で万全にまでなるほどのものだった。