「そうですか。では、お言葉に甘えます……」

ベルはジャケットを抱き締めるように着る。大柄な男性のものだけあってジャケットはとても大きい。

雪がふわりふわりとまた降り始める。ベルが息を吐くと息は白くなって消えていった。また明日になれば雪が積もっているのだろう。

「……お前は、なぜ私のそばにいる?バラがもう散ってしまったのに、なぜそばにいてくれる?」

しばらくの沈黙の後、男性がベルに訊ねた。ベルが横を見れば、男性は泣き出してしまいそうな表情でベルを見つめている。

「私は病気のせいでこんな顔になってしまった。家族から疎まれ、婚約者には突き放された。なのになぜ、お前は私の隣で笑っていてくれるんだ?」

そばにいる理由、それはベルにとって一つしかない。

「あなたを愛し始めているから、という理由ではいけませんか?」

街ではおしゃれや恋愛よりも読書好きなベルは変わり者として見られていた。姉からは嫌われ、貧しくなった家では食べていくことで精一杯で、家族としての幸せが何かももう見えなくなっている。そんな中、ベルは男性と出会った。