ぐらりと視界が揺れて、
知らないうちに涙が出てしまったんじゃないかと焦って目を擦った。


「あー目擦ったら赤くなるからやめろって」

「…タメ語」

「いいじゃないっすかこんなときくらい」


目を擦ろうとした両手首が大きな手に捕まれる。

かがみ込むようにしてあたしと目線を合わせた切れ長の目が、
いつもより優しい。


赤い髪が夕陽に染まる景色に溶けそうだった。


「なんでですか、なんで柚山先輩なんですか」

「……なにが」

「好きです」



息を飲んで二つの目を見つめる。


その目は全く笑っていなくて、
冗談でしょうと流せるようなものではなくて。


手首をつかむ手の力が更に強くなった。





「俺だって、好きです
好きなんです」


追い討ちをかける赤い色が視界一杯に広がる。


肩を竦めて身構えて目を閉じた瞬間、時間にしてほんの1秒。


そっと耳に口付けたその顔が離れるまで、
短いその時間の間


あたしの頭に浮かんだのは、

憎たらしくて綺麗なあの顔。