なるべく横の席を見ないように気をつけながら、席に着く。

ものすごく視線を感じるけど、
そこは気づかないフリで。

気づかない、フリ、で。





「…なんかさっき、すげえ俺のこと見てなかった?」

「見てないけど?」

「声震えてるよ?
寒いの?」

「…………」


意地の悪い声を聞くだけで、
普結くんが今どんな顔をしているのか簡単に想像がつく。


「見てないから」

また声が震えた。

あたしは本当に嘘がつけないタイプらしい。


「…へー、そうなんだ
俺は見てたけどね八宏さんのこと」



がたん、
大きな音を立てて椅子から落ちた。


「?

おい大丈夫か八宏、気分でも悪いのか?」

「…すみません大丈夫です」


あたしって馬鹿みたいに素直だ。

動揺しすぎて椅子から落ちるなんてそんな漫画みたいなこと、
本当にあるなんて。