「……俺、教室戻ります」

プールサイドから見る鳴海くんの顔は、影になってよく見えなかった。


だけどなんとなく声色でわかる。

「鳴海くーん…」

「……………」


返事をしないなんて珍しい。

よっぽど先ほどの普結くんの奇行に引いているのか、


はたまたあたしの気持ち悪い反応に引いてしまったのか。


付き合ってもない男に抱きつかれて顔を赤らめるような、
ウブな女なんだよあたしは…。


気持ち悪くてごめん、鳴海くん。





どことなく元気のない背中がゆっくりと遠ざかる。

その背中を見ながら鈴木がしみじみと呟いた。


「鳴海くんももしかしたら俺と一緒なのかもな…」

「一緒ってなにが?」

「きっと女の子に軽々しく抱きつける普結のことが羨ましくて仕方ないんだよ…」

「……それはアンタだけだと思うわよ」