「…普結くんがそんな後輩思いだとは知らなかったわ」


「俺って根は善良な人間だからね。」



さらりと言ってのけた普結くんの言葉にリエちゃんが吹き出した。


どの口が言ってんだ。


「…善良な人間のわりにあたしには厳しすぎない?普結くん」

「根性悪い人には厳しいよそりゃ。
当たり前でしょう?」

「あたしって普結くんの中では根性悪い人間なんだ?」

「もちろん」


真顔で固まったあたしには見向きもせず、普結くんは机から教科書を取り出してお行儀良く座り直した。

「相楽さん授業始まるよ?」

「ああ…そ、そうね、
席にもーどろっと…」


固まったままのあたしをちらちらと横目で見ながらリエちゃんが席へ戻って行った。

チャイムとともに先生が教室へ入ってくる。日本史の時間だ。


「…普結くんてあたしのこと嫌いでしょう」

「そんなこと一言も言ってないよ?」



どろりとした目で睨むあたしの顔を見て、にっこり笑う。

その顔を見て、不覚にも少しほっとしてしまう自分がいた。