ゆっくりと延ばされた手に両頬が包まれて、
普結くんの顔が少しだけ近づく。
向き合うような姿勢に少しだけ緊張する。
なんだろう。
何か言いかけた口が少し開いて、また閉じる。
「普結くん…?」
じっと此方を見つめる目が何かを考えるように細められた。
「どうしたの?」
あたしの頬を包んだままの手首を握って尋ねた時、
「……チョアヨ 」
また出た。
訳の分からない呪文。
こんな時にあたしのわからない言葉、使わなくてもいいのに。
離れていく両手を掴みたかったけど時すでに遅し。
さっさと教室を出て行く背中に「どういう意味ーーーー?!」なんて叫ぶことしかできなかった。

