「ほら見てみ?この神がかったプロポーション…
美しい…」

「なんと言われても野池恵子。」


譲らない普結くんに雑誌を見せてキャンキャン騒いでいる鈴木。


…いつもの風景だ。



「柚山くぅんっ!!」


今日もキラキラの大きな目をぱちぱちさせて教室に飛び込んできたのは笠原さん。


…いつもの通り過ぎる風景だ。



「…やっぱ夢だったのかな」

小さく呟いた声は誰にも聞かれることもなく、喧騒に消えていった。





「ねえ、柚山くん今日放課後ひまかなあ?
ユリと映画見に行かない?」

「映画?」

「これ!洋画なんだけどね、最近公開されたばっかなの!」

「ほう」


胸が嫌な音を立てる。

横目で隣を窺えば、まんざらでもなさそうな顔の普結くんが見えた。


笠原さんは本も読むみたいだし
趣味が合うのかもしれない。


心がみるみる萎んでいく。




「ごめん、放課後は八宏さんとかえるから」

「え?」

「だから無理。ごめん」