バトンを受け取った普結くんは、
弾かれたように飛び出した。
そのあとはあっという間に敵を追い抜いて。
「なにあいつ、めちゃめちゃ速ぇ…」
どこからか聞こえてきた茫然とした声に思わず頷いた。
速い。
めちゃめちゃ速い。
流れていく周りの景色がどう見ても速すぎる。
急いでゴールへと向かいながら、
必死で声を上げた。
「普結くんっ!!!!!!!」
がんばれ、とか
あと少し、とか
そういう言葉を言えばよかったんだろう。
だけどあたしは名前を呼ぶことで精一杯で、
ただ必死で呼び続けた。
ゴール地点へついた瞬間、
普結くんもゴールテープを切っていた。
グラウンド中で悲鳴のような声援が湧く。
凄かった。
ほんとに、凄かった。
語彙力のないあたしではそれだけしか言えないけど、本当に。
普結くんは凄い人だった。

