ついにきた。

何がって?


応援合戦だ。



大丈夫かな、学ランの裾踏んで転んだりとか
振り間違えたりしてないだろうか。


そんな母親のような心境のまま、
落ち着かずうろうろと歩き回った。



「ちょっと桃…何してんの
座りな?」

「あ、うん…」


リエちゃんに促されて座ったけど
やっぱり落ち着かない。

始まるまでまだ少し時間があるけど、
その少しの時間が今のあたしには永遠に感じられた。



そんな落ち着かないあたしの首筋に
なにか冷たいものがふわりと当てられた。


「ひっ!!!!」

思わず肩をすくめて悲鳴を上げる。

頭上から落ちてきた声は、


「さっき柚山先輩に会いましたよ」

鳴海くんの声。


「う…わーーー!
すごい鳴海くん、かっこいいね!」

「そうですか?
これ暑いんすよね」

「いや、ほんとに似合う!
ブレザーより似合ってるよ!」

「…そーですか。ありがとうございます」


素っ気なく言って口もとを手のひらで隠した。

…あたしなんか変なこと言ったんだろうか。



「あ、普結くんに会ったの?」

「さっき会いました。
あの人も応援団なんすね」


その言葉で少しだけ忘れていた感情が舞い戻ってきた。