受け身も取れずにそのまま倒れ込んだあたしは、
もはやされるがままで。



「八宏さん…っ!」



やけに焦ったような声だ。

珍しい。


息を切らしているのが声だけで分かった。




「俺、いつまで我慢してればいいんですか?
あなたはいつでも手に入る状況にあるのに」


倒れ込んだ鳴海くんの胸の中、
停止した頭で泣きそうな声を聞いた。

頭に回った腕があたしを優しく締め付ける。


「あなたがこのままどっちつかずの態度なら、もういいです
俺はしたいようにします」

「…やめ、」


普結くんの声が聞こえた瞬間

回った腕があたしの耳ごと全てを塞ぎ込んだ。





「絶対渡さない」



ぎゅっと締め付けられた腕が、

どんどん速くなる鳴海くんの胸の音が


やけにリアルだった。