「…ごめん笠原さん
ちょっと用事あるから」

「え?!柚山くん、どこ行くの?
ユリもついていっていい?」

「はい、本。
この二冊でよかったよね?」

「あ、うん…ありがとう」


有無を言わさず席を立って教室を後にする。
そんな普結くんの後ろ姿をポーッとした顔で見つめたままの笠原さんは、
大切そうに本を抱きしめた。


…よっぽど好きなんだな。


言いようのない焦りと、苦しさに襲われた。

サラサラの綺麗な髪に大きな目、
小柄な細い身体。

…勝てる気がしない。


落ち込んで項垂れた瞬間、
ポケットの中のスマホが震えた。