「そういえばさ、明子はどうしてサエコにあんなこと言ったの?」

『私、佐伯君のことどうしても好きになれないの。彼はやめたほうがいいと思うよ』

『明子って、佐伯君のこと好きなの!?だからあたしが佐伯君とうまくいかないように、でまかせ言ってるんでしょ!?』

サエコのお気に入りだった佐伯君に対して明子は不快感をあらわにしてそう忠告した。

それによってサエコの反感を買ってしまう結果になった。

「サエコちゃんが佐伯君のことを好きなのは知ってたの。ただ、佐伯君が酷いことを言っているのを聞いちゃって……」

「酷いこと?」

「『板橋サエコって俺のこと好きだよな?』って。『ちょっと遊んでポイ捨てするのにはちょうどいい女』だって言ってた。私、どうしてもそれが許せなくて」

「そんなことが……」

「佐伯君が他校の女の子と一緒に手を繋いで歩いているのを見たこともあるの。彼……色々な女の子に手を出している人だと思う。だから、このままじゃサエコちゃんが傷付けられちゃうって思って。でも、正直に全部話したらサエコちゃんを傷付けることになるから。だから――」

「そうだったんだね」

だから、明子はあんなことを……――。

「言い方がダメだったんだよね。自分の好きな人のことをあんなふうに言われたら誰だって嫌な気持ちになるもん」

明子は困ったように笑った。

「私、昔から友達とかできたことなくて。中学の時も仲が良い子って見つからなかったからいつも一人でいたの。だからね、高2になって流奈ちゃんに声かけてもらってサエコちゃんとナナちゃんと友達になれて嬉しかったの。佐伯君のこともうまく話せばサエコちゃんだって分かってくれたかもしれないのに……。ごめんね、流奈ちゃん。流奈ちゃんまで巻き込んじゃって」

「巻き込まれたなんて思ってないよ」

「ありがとう。流奈ちゃんは優しいね」

明子の言葉に首を振る。