数日後。
モヤモヤしたままで過ごしていた。
休み時間にトイレに行って戻ってくるとき、ふと廊下にいる井口さん達女子の会話に耳を傾けてしまった。
“あぐり”という名前を口にしたからだ。
「ねえ、雛。こないだ言ってた、鈴木くんに近付く後輩女子、どうしたの?」
「あ、齋藤あぐり?」
「そうそう。…何、もうとっくにシメたの?」
「当ったり前じゃーん!」
「でっ、何言ったの?」
「あたしが界也くんの彼女ってことにして、界也くんがあんたのこと面倒って言ってたよーって。あと、次近付いたら容赦しないよって」
「うっわー、雛。
性格わっるー!あははっ、ウケる!」
井口さんの彼氏…?
俺が…?
「井口さん、それってどういうこと?」
「えっ…?」
気付けば井口さんの元に行っていた。
彼女らからしたら、怖い顔してると思う。
「えっと…聞いてたの?…ははっ、盗み聞きは趣味悪いなぁ…」
井口さんは困ったように笑った。
「こっそり聞いちゃったのはごめん。
…だけど、聞き捨てならない言葉が聞こえたから」
「えっとー…」
目が泳ぎまくっている。
「あぐりちゃんに何したの」
「した、っていうか…さ」
「何したのっ?」
少し圧のある言い方をすると、目を伏せてしまった。
まあ、さっき聞いてしまったから、したことはある程度分かるけど。
「…悪いけど、俺が興味あるのは彼女なんだ。
あぐりちゃんに、余計な手出しした井口さんのこと、許さないから」
「えっ…ちょっ…待ってよ…」
許さないから、だって。
…子供だな、俺。
好きな子のこと守るのに必死過ぎ。
…いや、手を離してしまったんだ。
守れなかったんだった。



