俺は、そのままへたり込んでしまった。
傷付けるのが怖くて、強く言えなかった。
そんな弱い自分が悔しい…。
そう嘆いても、彼女とはもう会えないのかもしれない。だけど…何となく、彼女からは危険な思考が巡ってるようには見えなかった。
何とか立ち上がって、保健室に行った。
「えっ…鈴木くん、どうしたの?」
「まあ…ちょっと。一旦帰っていいですか?
今日、ジャージ持って来てなくて」
「いいけど…何があったの?」
言ってもいいんだろうか…。
「齋藤さん」
「え?」
「様子がおかしいから声かけたんですけど、激しく拒絶されて、雨の中で振り払われてしまって…」
「ああ…」
「彼女のこと、引き止められなくて、すみません」
「電話しておく。あなたは、荷物持ってくるから待ってて」
「は、はい」
佐野先生は、驚くほど冷静だった。
大人だからか。
あぐりちゃんのあの様子を見ていないからか。
…あんなにボロクソに言われたのに、これは彼女が本気で思って言ってるわけじゃないって、どこかそう思っている自分がいる。
そう信じてる自分がいる。
だから、あぐりちゃん呼びをやめてしまえば、置かれた壁を更に助長させてしまうような気がした。
諦め悪いなぁ、俺。



