「あぐりちゃん…!」
傘を彼女の左手に押し付けるようにすると、
「いらない!」
と振り払い、拒絶されてしまった。
傘は音を立てて地面に叩きつけられた。
…何で?
そんなに、拒否するのは何で…?
「何で…あぐりちゃん…」
「…っ、離してよ」
もう、微笑みを維持するのは無理だった。
好きな子にここまで拒絶されるのは、しんどいなんて言葉じゃ収まりきらないほどだった。
「今離したら、あぐりちゃんはどうするの?」
「…家、帰る」
「本当に?」
考え過ぎかもしれないけど、自殺考えてるとかじゃないよね?そんな不安が、さっきからよぎって仕方無かった。
今、ここまで俺を拒絶する理由を聞き出して、思い直させるしかない。
本当に家に帰るだけで、俺の考え過ぎなら、それはそれでいい。
「…さっき、引き止めないって言ったけど、やっぱり前言撤回。
今手を離したら、俺の届かない場所に行ってしまいそう」
少しだけ遠回しな言い方をしたつもりだけど。
「…らい」
「え?」
聞き取れず、聞き返した。
「先輩のこと、嫌いっ…」
「えっ…?」
聞き間違いだと信じたかった。
だけど、聞き返すべきじゃなかった。
「大っ嫌い…!」
と、言い直してきた。
心臓の奥を抉られるような感覚を覚えた。
「急に…そんなこと言わないでよ、あぐりちゃん…」
「だからもう、さよならです」
そう言って、余りにもツラそうに笑顔を浮かべてきた。場違いなほど精一杯浮かべてるように見えた。



