そして、また歩き出した。
ふと目に入った外は、強めに雨が降っていた。
折り畳み傘を出す気配がない。
俺は廊下の方に、持っていたファイルやペンケースを投げた。
自分の黒い傘を抜き取り、彼女の後を追う。
そして、彼女の右手首を掴んで引き寄せた。
こちらに振り向いたあぐりちゃんは、少しだけ泣いていた。
気付かないフリをしておこう。
余計に抵抗されそうだから。
「傘、忘れたの?
ほら、俺の持って行っていいから。
俺は大丈夫だから。あぐりちゃんに、風邪なんか引かせたくない」
折り畳み傘も持って来てるし。
仮に俺が風邪引いたって構わない。
どうしたって俺が、あぐりちゃんを守りたい。
なんとか微笑みを消さないよう、想いを伝えた。
あぐりちゃんがいなくなるのは嫌だって。
また笑ってくれるまで、待ってるからねって。
不安があるなら言ってほしいって。
それでも尚、少し涙を零しながらも、どこかツラそうな表情から動かさない。
「俺、急かさないから。今帰るのは引き止めない。引き止めないけど、傘だけはほら、持って行って?」
そう言って、傘を受け取るように促すけれど、彼女は全く反応を示さない。



