「…そっか?頑張ってね」
「うん!じゃあねっ!」
井口さんは急いで立ち去って行った。
俺も歩き出すけど、あぐりちゃんは軽く俯いたまま立ち止まっていた。
「あぐりちゃん?早く行くよ?」
「えっ!あっ、はい」
俺の後をついてきてくれたけど、やっぱ気のせいじゃないよね?
距離感の近い井口さんとの仲を勘違いされる可能性があるっていう点では、面倒事だったのかもしれないけど。
もしヤキモチ妬いててくれるなら…
ちょっと嬉しかったかもしれない。
夏休みに1度だけ、あぐりちゃんと遊びに行けた。
カッコイイって、言ってくれた。
何で映画で泣けなかったかって?
好きな女の子の前で、泣くわけにはいかなかったからだよ。
予定を立てていなかった俺を、全く責めなかった。
好き以外にならないよ。
ちょっとくらい、優しいの封印してくれないと、その優しさに甘えてしまいそうだ。



