翌日。入学式。
…行くわけない。ろくに校歌も歌えないし。
校歌をちゃんと覚える前に、登校しなくなったから。
それに、あんな場所に来てしまった新入生を、気持ち良く迎え入れられる気がしない。
鈴木先輩は、入学式に参列するんだろうか?
…いや、関係無い。
たまたま顔を合わせたから声をかけてくれた。
保健委員長だから、義理で話しかけてくれた。
そもそも、彼が心優しいからああいう接し方をしてくれた。
それだけだ。
…変な期待をするんじゃない、齋藤あぐり。
翌週。とりあえず登校してみることにした。
きっと今日は、教科書配りの日だろう。
どうせ行かなかったら行かなかったで、担任から連絡は来る。だけど、それが来てから行くのは嫌だから。
また保健室だけでいい。
教室になんか行かなくていい。
そう言い聞かせて。
丁度普通の生徒が登校する時間の5分後に着いて、保健室に着く。
ガヤガヤしている登下校のタイミング、休み時間のタイミングには、絶対行きたくない。
普通の生徒に紛れられるけど、それと同時に、普通の生徒に“不登校の自分”を見られる。
誰も気にしちゃいない。自意識過剰。
分かってるのに。



