翌週。
休み時間に保健室に行くと、齋藤さんがいる。
彼女は徐々に楽しそうに話してくれる。
優しくて可愛らしい笑顔を向けてくれる。
少しして、嶺野先生がやってくる。
齋藤さんの表情が固くなったように見えた。
それから、2人は担任と揉め始めた。
教室に戻ることを渋っていて、嶺野先生は理由を引き出そうとしているけど、理由はよく分からない。
俺がいるからかもしれない。
話しにくいのかな。
それか、話したくもないほどの傷を負ったか。
どちらにしても、彼女の教室への拒否具合は絶対だった。
3年間保健委員をやっているから、こういう子達の様子を間近で見ることが多かったけど、類を見ないぐらいの拒否反応だ。
とにかく“学校”という場所が嫌いなんだろう。
俺だって別に、学校好きってわけじゃないけど。
なんていうか、あんなに嫌いなままでいるの、ツラいだろうな。
お節介かもしれないけど、ふと、少しでも助けにないたいと思った。
「失礼しました」
「はい、さようなら」
嶺野先生が職員室に行ったことで、齋藤さんは保健室を後にしようとしていた。
俺は閉じた本を手に、彼女を追いかけた。
「あぐりちゃん!」



