「しばらく保健室で休む?」
「…はい」
「ほら、おいで」
俺がなるべく優しい声でそう言うと、彼女はやっと動けるようになったのか、ソファに腰掛けた。
こういう子は、男が少し苦手だったりする。
だから、余計な警戒心とか恐怖心を与えたくない。
やっとソファに座ったものの、やたらガチガチになってしまっている。
知らない男と急に2人きりは、緊張するか…。
自己紹介、してみよっかな。
「俺、3年の鈴木界也。君は?」
彼女は顔を上げたが、目を合わせずに伏目がちに
「えっと…2年の齋藤あぐりです」
と、軽く名乗ってくれた。
「齋藤さんね。よろしく」
この後は…どうしよう?もうちょい自己紹介?
「俺、保健委員長なんだ。
自分自身も体調優れないこと多くてさ。だから、集会の時なんかは保健室にいる」
「そ…そうなんですか」
あんまり興味無かったかな。
「記憶違いだったらごめんだけど、去年も時々来てたよね?」
「…たまに、来てました」
「あ、やっぱりそうなんだ!休み時間に当番で来てた時、見かけたもん」
何故か、つい嬉しくなってテンション高めでそう言ってしまう。
彼女に目を向けると、さっきまでのガチガチは多少緩和されたようにも見えるけど、少し不審がられたようにも見える。



