自宅の鍵を開け、
「ただいま…」
と、小さく言葉を発する。
「おかえ…いや、早くない?」
たまたま廊下にいたお母さんに、怪訝な顔でそう言われる。
「…頑張ったもん」
「教室行ったの?そこに行けなきゃ意味無いじゃない」
「保健室で精一杯」
「はあ…」
あからさまに溜め息をつかれる。
「…去年もそうやって、行きたくないを繰り返して、また今年もそうやって行かないつもり?だらけ癖がついたんじゃないの?」
それは否めないかもしれない。
だけど人がいっぱいいたり、人の声が必要以上に響いたりして不快になるのは、中学校行かなくなってからだっけ。
もはや、鶏が先か卵が先か、みたいなことになってる。
「あんたがこうやってウジウジしてる間に、同級生はどんどん偏差値伸ばしていくの。あぐりは確かに、自習でそこそこできるかもしれないけど、内申点とかいうのがあって」
「もうやめて!何回も聞いた!」
「ほら、またそうやって。何回言ってもあぐりが分からんちんだから、ダラダラ1年過ごすんでしょ?」
「分からんちんって…」
「あんたのためを思って言ってるの!」
「うるさいっ!」
私は部屋に入って、ドアをバタンと閉める。
「あ、もう!すぐ逃げる!」
私はすぐさま制服を脱いで、トレーナーにショーパンの部屋着姿になった。
ハンガーに全て掛け、1度部屋を出て洗面所で手洗い嗽をする。
私を見たお母さんは、再び何かを言いたそうにしたが、諦めたらしく、あれ以上何も言わなかった。



