翌日、しっかりと風邪を引いて、今週のさくらは休むことになった。


それからというもの、さくらには何とか復帰した。学校には行かなくなった。

勉強は、さくらで見てもらい、自習で頑張るようになった。

テストは、学校からさくらに郵送してもらって、さくらで受けるようになった。

食欲は相変わらず無いけれど、美唯といる時は、少しずつ笑えるようになった。

もう大丈夫だよ。

普通の生活が送れるようになったよ。


…そこに、鈴木先輩はいないけど。


「あぐり。もう、先輩のことは本当にいいの?」

「うん」

「無理してない?大丈夫?」

「…平気、だよ。
美唯が沢山元気付けてくれたから」

「あぐり…」

「私、幸せ者だね。
美唯みたいな、素敵な友達がいて」


私は知らないふりをした。

美唯が、困ったように微笑んだこと。


12月。
1度だけ、渡さなきゃいけない物があるからと言われ、渋々登校した。

受け取って、帰ろうと廊下を歩いていると、鈴木先輩の姿が少し遠くに映る。

目が合わないように、目を伏せた。

すれ違う時…


「あぐ…」


と、躊躇ったような声が聞こえた。

気付かないフリをして反応しなかった。