“保健の先生=優しくてふわふわした女性”
って、勝手なイメージがあるからか、個人的には苦手なタイプ。


「はい」

「せっかく来たんなら、体育館に来なさいよ」

「…それは…」


こっちのしんどさとか、嫌な気持ちとか…そういうのは、ただのワガママとしてしか捉えてくれないんだろうか。


「2年4組よね。休み時間になったら、1度嶺野先生も降りてくるだろうから、とりあえず待ってなさい」

「…はい」


佐野先生が自分の机に向かって、私は少し長めの息を吐いて、目を伏せた。

そういえば、鈴木先輩がいない。

…ああ、そうか。

彼は不登校なんかじゃない。
多少体調が悪くても学校には来れる人だ。

始業式も終わったことで、教室に行ったらしい。


…さて、休み時間までは長い。本くらい持ってくれば良かった。

どこもかしこも居心地が悪い。

家にいれば、何でいるの?という空気。

教室に行けば、不登校が新学期になって来てる!みたいな空気。

好奇の目を、自意識過剰とは分かっていても感じてしまう。

そして今、苦手な佐野先生と2人きりの保健室。


「…やっぱ、帰っていいですか?」

「え?」

「帰りたい…」

「早退になるけどいいの?」

「いいです」

「そう…分かった」

「さっ…さようなら」

「はい、さようなら」


私はそそくさと保健室を後にした。
来た時の動きとは全く別の、俊敏な動きで。

帰り道も、行きの半分ほどの時間で歩く。