翌日、どうしても外に出る気になれなくて、さくらは休むことにした。
体調が悪いっていうことにして、お母さんに電話してもらった。
今美唯に会ったら、安心して泣いてしまいそうだった。唯一、先輩のことを話せる相手だから。
美唯なら優しく慰めてくれそうだけど、余計な面倒をかけたくないという気持ちが生まれてしまった。
翌週もずっと、外に出られずにいた。
ベッドの中で、悶々と考えていた。
本当に先輩は、井口さんと付き合ってるのか。
いや、付き合ってない。いや、付き合っている。
私のことを本当に煩わしく思っていたのか。
そんなこと、言うわけないよ。…いや、言っていたのかもしれない。
どちらにせよ、私が鈴木先輩にもっとアピールして“私が彼女になる!”なんて、そんなことは思えなかった。
「あぐり。そんなに体調悪いの?」
部屋の外からお母さんの声がした。
「外に出たくない」
「別室くらい行きなさいよ。さくらだって、あんたにとって嫌な場所じゃないでしょ?」
「…行けない」
「んー…。じゃあ、ご飯は?」
「いらない」
「…そう」
それ以降、何も言ってはこなかった。
その日の夜、何とか部屋から出て家族4人でご飯を食べていると。
「今日もさくら休んでるのよ。1日中部屋にこもっちゃって。何か食べるのもこれが初めてだし」
「どうしたんだよ?あぐり」
お父さんにもそう聞かれてしまう。
でも、答えられない。
答えたくない。
「タブレットいじってんじゃないのー?姉ちゃん」
「いや、タブレットは壮太の部屋にずっとあるでしょ。通信量1番食ってんの、あんただからね」
「何だよ、姉ちゃんの話だったのに」
壮太には悪いけど、そっちの話に切り替えてもらった方が都合がいい。
その願いは叶って、両親からデータ量のことについて口酸っぱく注意されていた。その間にさっさとご飯を済ませて、ご馳走様と呟いて部屋に戻った。



