それから3週間くらい、普通の日々が続いて、あの女の子のことをあまり思い出さなくなっていた。
明後日から夏休みだ。
「あぐりちゃん、夏休みって会えるかな」
「え…」
休みの日にまで、先輩に会えるの…?
普段なら、中学校の生徒に会いたくないからって出かけたくないと思うのに。
真っ先に、“鈴木先輩に会える!”っていうことに嬉しくなってしまった。
…や、でもさ?
「先輩、受験生なんじゃ…」
「いいじゃん!息抜きしたいじゃん!」
「結果が奮わなくても、私のせいにしないでくださいね?」
「酷なこと言うなぁ…」
彼は苦笑した。
「連絡先交換しない?」
「ああ…」
両親の方針で、携帯は高校生にならないと持たせてくれないことになっている。
今まで何度抗議したことか。
これで、弟だけ中学生になってから持つようになったら、もうこれは、猛抗議不可避だ。
「個人の連絡手段が無くて…」
「携帯持ってないのかぁ。どうしよう」
「小5の弟と共用で使ってるタブレットならあります」
「あ、じゃあそれでLINEできるかな。俺の電話番号教えるね。…ここ書いていい?」
「うん」
彼は私の英語のテスト裏に数字を羅列させた。
好きな人と、家でも連絡できるのか…。
「そろそろ行くね。じゃ、LINE待ってる」
「はい!夜します!」
そう返すと、彼はヒラヒラと手を振って教室へ戻っていった。



