「おはよう、ございます!…寝坊?」
「ちょっと朝キツくてねー。頑張って起きてきた」
確かに、声が眠そうだ。
「テストの時だけ別室にしてもらうことにしたんだ。体調悪くなりやすいから。あぐりちゃんも会議室?」
「私もです!」
同じ教室にいられるなんて、それは嬉しい!
そう思いながら、ふと彼の寝癖を見つける。
「先輩」
「ん?」
「寝癖。後頭部ハネてます」
「えっ、嘘」
「ホント」
鈴木先輩は軽く後頭部を撫でる。
「ここもうダメ。いっつも直んないの」
「そういう癖って付いちゃいますよね」
そう返すと、彼は少し頬を膨らませて不満げな顔を浮かべた。
「あぐりちゃん、癖知らずの綺麗な髪してるじゃん。梳かして終わりでしょー?」
「はい」
「まっすぐ肯定するじゃん」
綺麗な髪か…。
あまり良い所の無い私にとって、唯一と言っていいような自慢できる所。
「綺麗って言ってもらえて嬉しいです」
「へー?色んな人に言われるでしょ。女の子なんか特にさ。クラスの女子とか、誰々ちゃん髪切ったー?とかやってるの、よく見かける」
「確かに同世代の女の子なんかは言ってくれるけど…。学校だと、結びなさいって、そういうことしか言われません」
「まあ、そっか。でも俺は、その綺麗な髪にヘアゴムの跡つけてほしくない気もする」
校則違反を勧める人現る。
「何を助長させてんだって感じだけど」
「悪い先輩ですね」
「いやぁ、そっちこそ。悪い後輩ですね」
そんなやりとりをしながら。



