「あぐりちゃんはあぐりちゃんで頑張ってるでしょ」


何かを察したかのように、そう言ってきた。


「仮に、何か目標があるとするじゃん。それを達成できるなら、それを成し遂げる場所なんかどこでもいいと思わない?」

「え…?」

「1番大事なのって、結局“やり遂げる心”だと思ってるんだ」


そう言ってニコッとしてくる。


何も否定しない。
私の心を包み込んでくれるみたいだった。


「鈴木先輩は優しいですね。
周りの大人みたいに、ああしろこうしろって押し付けないで、柔らかい毛布で包んでくれる…みたいな感じ」

「あははっ!俺、別に大人じゃないし!
あぐりちゃんから見りゃ年上だろうけど、全然ガキなんだから」


心がじんわりと温かくなる感覚がする。

そっか。

まあそうだよね。


こんなカッコ良くて優しい鈴木先輩に、無謀にも恋に落ちてしまうのは、当たり前だ。

たまたま知り合った後輩女子に、優しくしてくれてるだけだ。

彼女、いるんだろうなぁ。


「ん?どうかした?」

「えっ」

「俺のことぼんやり見つめてくるから」


私のバカっ!
見惚れてたんかっ!


「そんなに見つめられると、ちょっと照れる」


そう言って軽く頬を染める。

なっ…何で?