ああ、行きたくない。
もうホント、行きたくない。
どうしたって、行きたくない。
そのワンフレーズだけが頭を占めて、余計に足取りを重くする。
嫌なことされたわけでもない。
ましてやいじめられてたわけでもない。
友達だって、人並よりは少ないかもだけど…
いないわけじゃない。
それなのにどうして、あの教室はあそこまで
“行きたくない場所”になったんだろう。
やめだやめ!帰ってから何しようかな。
そういうのを考えた方がまだマシ!
ということで、学校には着いたが…。
案の定と言えば案の定、時計は8時30分を指している。
…間に合う時刻には出たもん。
足が、重かっただけだもん。
誰もいないと分かっている教室にすら行きたくなかった。
“教室”という、他の空間とは違う嫌な空気が、居心地の悪さを加速させる。
校庭に足を踏み入れれば聞こえてくる、体育館からの校歌を歌う声。私からすれば、シューベルトの“魔王”よりも身震いするようなモノにさえ感じてくる。
それが終われば、口々に「だりぃー」「帰りてぇ」といった、男子生徒の声。
「昨日やってたガル美のインスタライブ見た?」「見た見たー!」といった、女子生徒の声。
そして、女子と男子でそれぞれ、同じ服装と同じような髪型。
“個性なんて不必要だ”とばかりに、皆同じ格好をして。
そんな光景が、私には異様に気持ち悪く見えて仕方無い。



