翌日から私は、朝のHRが始まる頃に別室で自習するようになった。
別室は、大抵第2音楽室。
支援員の先生に教わる時は、2階の端にある個室に行くことがほとんどだけど、基本的に1人で勉強する方が向いてるから、滅多に行くことはない。
1時間目か2時間目の後の休み時間に、別室に鈴木先輩がやって来てくれるようになった。
道で見かけた野良猫の話、教室や家であった面白い話、好きな物の話…日によって色んな何気ない会話をしてくれる。
そして今日も、彼は来てくれた。
「おはよう。今日もちゃんと来られたね」
「はいっ!」
相変わらず優しい笑顔を見せてくれる。
彼も席に着く。
「何の自習してたの?」
「今日は、数学やってました」
「どれどれ?」
そう言って、私のノートを眺めてくる。
「数学、結構得意?」
「英語と数学は、そこそこ自信あります」
「へえ…そっか。いいなー」
「…先輩は、勉強苦手ですか?」
「俺も数学は得意だし、国語も好きなんだけど…英語だけは、からきし分からないんだよね」
国語か…確かに、保健室にいる先輩は、よく本を手にしている。
「私からしたら、日本語の文法よりは英語の文法の方がマシです」
「あー、それは俺も分かる。普段何気なく使ってるからこそ、改めて問われると、何じゃこれ?ってなる」
すんごい肯定してくれる。