「そろそろ行かなきゃだから、今日はもう帰ってもいいよ。じゃ…さようなら」

「さようなら」


嶺野先生は保健室を後にした。

そろそろ休み時間も終わる頃か。
帰っていいって言ったし、帰ろう。
授業もそろそろ始まるのだから、廊下に生徒もいないだろう。


「失礼しました」

「はい、さようなら」


佐野先生に声をかけて保健室を出た。
すると…


「あぐりちゃん!」


後ろから慌てたような鈴木先輩が、私の名前を呼んで引き止めてきた。

…あれ?こないだは苗字で呼んでなかったっけ?気のせいかな。


「えっと…?」

「学校、嫌い?」

「…好きではない、です」


唐突な謎の質問。

勿論、好きじゃない。行きたくない場所。


「俺と喋りに来てよ」


鈴木先輩は、まっすぐな瞳でそう言ってきた。


「先輩、と?」

「そう。…俺、休み時間ならほぼいつでも保健室いるから!別室の方に顔出すこともできるし!」

「なっ…何で?」