休み時間になって、佐野先生が嶺野先生を呼びに行った。ソファに座り、鬱々とした気持ちで待っていた。
どうせ、来なさい来なさい、とアレルゲンを増やしてくるだけだ。
少なくとも2年のうちに戻るつもりはない。
だけど、3年になったら否が応でも戻らなくてはいけなくなるんだろうな…。
その時、ドアが開く。必要以上にドキリとして振り向いた。
「あっ、齋藤さん…!」
「せ、先輩…」
鈴木先輩だ。
「おはよう」
「え…あ、おはようございます」
突然の挨拶に驚いたけど、そりゃそうか。
朝だもんね、挨拶くらいするよね。
「佐野先生は?」
「今ちょっと、職員室行ってます」
「ふぅん、そっか」
こないだと同じ椅子に彼は座り、私に顔を向けてくる。
「あ、教科書取りに来たの?」
「はい」
「結構重くない?3年通して使う教科書なんかもあって、3年生って案外新しいの少ないんだよ」
「社会科とか、家庭科とかですか?」
「そうそう。家遠いの?」
「片道15分前後ですかね」
「そうなんだ…そこそこあるね。頑張って!」
鈴木先輩があまりにも元気なトーンで話してくれるから、私も自然に笑みを浮かべて頷く。



