「今は無理」


羽柴は顔を上げた。
悲しそうな顔をしていた。

…なんでそんな顔するんだよ。

私が悪いみたいじゃん。


「そっか、分かった。…また明日!」


無理矢理作ったと分かる笑顔でそう言って、走り去って行った。

私は教室に戻り、リュックを取りに行く。


「あれ、美桜菜残ってたの?」

「うん、宿題終わらせたくて。…ってのはまあ第2の理由で。浬沙、なんか羽柴くんに呼び出されてたから気になってさ!」

「ああ…いつものだよ」

「告白?」


私は苦笑を浮かべながら頷いた。


「振ったの?」

「うん…うーん、今は無理って伝えた」

「9割方振ってるじゃん!…えー、羽柴くんはガチっぽいけどなぁ」

「私も少しだけそう思ったから、1割だけ残した」

「でもほとんど無下にしてるよ?」

「今までが酷かったから…怖くなった」

「うん…」


もしガチなら、また何か行動に表すと思った。
それに賭ける。


「さあ、帰ろうかな!浬沙も帰るでしょ?」

「待っててくれたし、駅まで送るよ」

「やったー!」


小学生からの幼馴染だけど、高校入る前に美桜菜は引っ越して、電車通学。私は歩いて通っている。