ああ、そういうことか。
美桜菜ね、美桜菜のことが好きなのね。
だったらね、山下じゃなくて八女なのよ。
告白する相手間違ってる。
私じゃなくて、直接本人に伝えなさい。
なんて言えるわけはなく。
でもまあそういうことでしょ。
「なんで私にいきなり」
「いきなりじゃないよ」
「え?」
「毎日声かけて、視界に入るようにはしてたよ」
挨拶はされてたな、確かに。
「まあ、反応薄かったけど…俺のできる精一杯のアタックだった、正直」
そりゃね、美桜菜が本命だから、下手に私に時間かけたくないでしょうね。
「山下さんのこと、俺が幸せにしたい。八女さんにしか見せないような笑顔、俺にも見せてほしい、です。お願いします」
頭を下げて、手を差し出してきた。
今までで1番リアルな告白だった。
でももう騙されない。傷付きたくない。
恋愛なんて、男なんて、まっぴらだ。
なのに…どこか信じてしまいそうな自分がいるのは何で?リアルだから?毎朝、帰りも毎回、挨拶してくれた小さな実績があるから?
いやいや、情に流されるな。違う、美桜菜を手に入れるためなら男はなんだってしてきた。



