帰りたくなった。

私への挨拶は、ただの社交辞令か。そっか。


放課後。


「あのさ、浬沙」

「ん?」

「今から羽柴くんに告白してくる!」

「へ…?」

「今、校舎裏で待たせてるんだ、急いで行ってくる」

「待っ…」

「何?」


引き止めそうになった。

いや、いや…引き止める権利なんか私にないじゃん。


「いや、ううん。なんでもない。行ってきな」

「うん!応援してて!」

「分かった」


上手く笑えた気がしない。

美桜菜が告白なんてしたら百発百中だ。

元々、羽柴だって美桜菜が好きで私に近付いて告白してたわけで…。

――山下さん、付き合ってほしいです!――

それから何度も言われた、好きの言葉と。

私がどれだけ無視しても、毎日声かけてくれたことと。

美桜菜が休みの時に、昼休み一緒に過ごしたことと。

一緒にゲーセン行ったことと。


…ああ、ダメだ。美桜菜に取られたくない。

気付けば校舎裏に走っていた。


校舎裏には、2人の姿。向き合っている。

もう遅いか、いやでも…。