「俺が好きなのは、山下さんだよ。目の前にいるじゃん」


唐突な右フックを仕掛けられた。
だけど分かってる、違う。本命は…私じゃない。

5日間、私は羽柴と一緒に昼休みを過ごすことになった。インフルエンザは7日間休むからね。


「週明けから八女さん来るね。良かったじゃん」

「羽柴も良かったね」

「ん?」

「美桜菜と話せるから」

「うん、まあ。…俺的には、山下さんと話したいんだけど。八女さんに取られちゃうからなぁ」


また何かほざいてる。


「ねえ、今日の放課後空いてる?」

「空いてない」

「そっか、空いてるんだね」

「話聞いてた…?」

「八女さんから、部活やってないから山下さん放課後いつも空いてるって聞いたよ」


美桜菜め…。こればっかりはちょっと恨む。


「ちょっと気晴らしにどっか出かけない?デート!」

「却下」

「却下を却下」


断る理由が作れない。どうしてだ、頭が回らない。


「いいよ…」

「じゃあ、山下さんの好きな、ゲーセンね!」


美桜菜から何吹き込まれてるんだ…。


そして放課後。
何故かウキウキの羽柴はさておき、帰りますか…。


「ほらそこー、帰らなーい」


リュックを引っ張られる。


「ちょっ」

「それとも何、手繋いでほしかった?」


と、囁かれる。


「んなわけないでしょ!」


羽柴は楽しそうに笑う。