昼休み。母お手製の弁当を、席で食べようとしていると、空いている前の席に後ろ向きで座ってくる羽柴。


「八女さんいなくて寂しいんじゃないの?一緒に食べよ」


いいよ、とも言ってないのに、自分の弁当を広げ始める。


「山下さんの弁当、彩り豊かだねー。ピンクのうさぎちゃん、可愛い」


少し恥ずかしくなる。


「てか八女さん、インフルだってね。流行ってるね、俺もワクチン打ってないから恐怖。打たなきゃなぁ」


私は、広げていた弁当をしまって、弁当と水筒、スマホを持って席を立った。

何よ、美桜菜がいなかったら私で暇潰し?


「山下さん、ちょっ…」


広げかけの弁当を慌てて閉じてるのを横目に、外廊下の段差に向かった。

ここなら見つかるまい…


「いた!もう…」


見つかるんかいっ。

もういいや。好きにして。


「…なんで、俺のことそんな避けるの?」


傷付かないため。もう恋愛なんか懲り懲りなんだよ。


「お願いだから、返事だけはしてほしい…かな」


だったら…。


「本当に好きな子に話しかけたらどうなの?あ、そっか。今日はいないんだもんね」

「…どういうこと?」

「そのまんまの意味だよ」